昼になりました。

 

13時過ぎに母のところにいくと、介護士さんが近寄ってきてお母さんが薬を朝から飲まないと言って

飲んでないんです。飲ませてください。

 

それを聞いている母は、あんた、告げ口かい!

 

介護士さんから毎日の状況を聞いているだけだよ。

 

あ~そうか。わかったよ。

 

母はそういうと不機嫌そうな顔を見せます。

 

 

ちょっと部屋に一度戻りますね。

 

 

介護士さんもはいと。小さい声でいいます。

 

朝ごはんも昼ごはんも食べてないんです。

 

水分だけはなんとかとってもらいましたが、ごはんを全然食べなくて・・・臍を曲げてしまって。

 

わかりました。

 

 

部屋に車椅子を押して戻ります。

 

今日はご飯食べてないの?

 

うん。食べてないよ。

 

朝も昼も?

 

朝も昼も。こんな車椅子に座っているだけでなんの運動もしてないのに、歩いている人と同じご飯って事はないでしょ。

 

いや、一人分は一人分だからさ。

 

それでも多いよ。

 

それだけじゃない。ごはんを食べたら薬を飲まないといけないでしょ。それが嫌だからごはんを食べないんだよ。

 

いや、ごはんと薬は関係ないよ。薬は必要だから飲むものだから。

 

あんたね。私は薬局に勤務してたんだよ、そこでどれだけ必要のない薬の処方を見てきてどれだけ嘘ついて飲ませてきたと思うの?

 

嘘?

 

そうだよ。必要のある薬なんて、半分もあるかないか。それ以外は必要ない薬だった。

 

母は、若いころは薬局に勤務していました。割と大きな総合病院でしたので、それぞれの科で薬を出してそれぞれの科で薬が出た人もいるでしょう。

その頃は今と違いチェックの体制は不十分でした。

 

そのために、内科で胃が調子悪いと言えば内科で胃薬が出て、外科でも胃の調子が悪いと言えば胃薬がでて、耳鼻科でも胃が調子悪いと言えば胃薬がでて、結果的に3種類の胃薬が出たものです。

薬局には患者さんに指導する権利はなく、医師のみが処方を決められる。

その医師に言うと、権威主義だった時代なので医師は俺に意見をいうのか!薬局ごときが!!という時代だったのです。

その話はまだ母が認知になる前に、僕によく言っていた話でした。

 

一つずつ説明をして、これは便秘でしょ。これは、歯の歯槽膿漏の抗生剤で、これは炎症止め。

この3種類は飲もうか。

 

そっか・・わかったよ。

 

なんとか飲んでもらいました。