僕が開業したのは20歳代でした。
まだ経験も不足している中での開業でしたし、今から考えてみると怖いもの知らずだったなと思います。
銀行から1000万を借金しました。
それで始めたのです。
銀行はどこの銀行も貸してくれず、貸してくれたのは父の知り合いの地場の銀行でした。
そこの専務さんが、僕を専務室に呼んでくれたのです。
渡辺くん、君は開業資金を貸してほしいということを聞いていますが、返せますか?
はい。もちろんです。そのためのシュミレーションも持ってきてます。
今読んでみたよ。でもね、このシュミレーションどうりにいかなかった場合は?どう考えてるの?
え?いかない場合??
そうだよ、行かない場合は?
このシュミレーションには毎日10名の患者さんが半年後からくることになってるね。その通りにくれば確かに返済計画通りになると思うけど、もし行かなかった場合の策を聞いているんだよ。
いかない場合は考えていません。必ずいかせます。
ほんとに世間知らずでした。二の手、三の手を考えておくのが経営者だし、それを聞いてくるのが銀行です。
渡辺くん、たとえば働き手を失った場合に家のローンは、支払えなくなる。それを防止するために団体信用生命保険がある。みんな入ってもらっている
君の計画者の通りに患者さんが集まらなかったら、支払いは滞ることになるね?
これじゃどこの銀行も貸せないよ。
いえ。半年後に支払いが滞っても、運転資金を余剰を持たせているんです。なので、もう半年の家賃は運転資金のほうでなんとかなります。
なので、1年間は存続はできる計算なんです。
君の給料は?
出ません。もし食べれなくなったら夜中も働きます。
どうやって?
コンビニでもなんでも。深夜営業の店ででも。
その気概があるといいたいんだね。
はい・・・なんとか貸していただけませんか?
返答は後日になるので。一存じゃ決められない仕組みなんだよ。
そういわれ、でも数日後には1000万が振り込まれていました。
うちの最初の患者さんはその専務さんです。開業の日にやってきたのです。
よぉ。来てみたよ。
その専務さんはその後退職され専門学校の校長になりました。
そこも退職されたのはもう20年も前の話です。
素晴らしい銀行員の方でした。