過剰な免疫反応抑制 富山大和漢研がマウス実験

富山大和漢医薬学総合研究所は、食物アレルギーの治療法として、漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」の服用と、原因となる食物を少しずつ食べて治療する「経口免疫療法」を併用すると、アレルギー症状の発症を抑えられることをマウスの実験で発見した。この研究成果を踏まえ、富山大附属病院では臨床研究を開始。食物アレルギーの根本的な治療法の確立につながることが期待される。(社会部次長・荒木佑子)

食物アレルギーは、卵や小麦など特定の食品を食べると、じんましんや呼吸困難などの症状が出る。有効な治療薬はなく、症状が出る食物だけを最小限除去することが治療の基本になっている。原因食物をあえて食べ、症状が出る最低量を超えて徐々に増やしていく経口免疫療法は、時に強い症状を誘発するリスクがあることなどから、一般診療では推奨されていない。

葛根湯は、カッコンやシャクヤク、ケイヒなど7種類の生薬からなる漢方薬で、かぜ薬として知られる。和漢医薬学総合研究所消化管生理学分野の門脇真教授、山本武助教らは、卵を食べるとアレルギー症状を起こすマウスをつくり、葛根湯を与えた場合の効果を検証。腸管で、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」が増え、発症が抑制されることを発見した。

卵成分を少量から少しずつ増やして与える経口免疫療法と、葛根湯の投与を併用する研究も実施。経口免疫療法だけの場合よりも、腸管で制御性T細胞が増え、治療効率が上がることを明らかにした。

これらの結果を受け、富山大大学院医学薬学研究部(医学)小児発達医学の足立雄一教授と伊藤靖典助教は、昨年12月から臨床研究として、葛根湯と原因食物の少量摂取を併せた治療をスタートした。

食物アレルギーのある子どもが原因食物をどれくらい食べられるかを調べる負荷試験を行い、週3回以上、症状が出る量よりも少ない量を摂取しながら葛根湯を飲むよう指導。6カ月間、続けた後で再び負荷試験を行い、葛根湯を飲まなかったグループと比較する。3年計画で計60人の登録を目指す。

葛根湯を併用することで、従来の経口免疫療法よりも安全で治療効率が高い治療法の開発につなげたい考えだ。門脇教授は「基礎研究も続け、さらなる治療効率の向上や、寛解が維持できるかについて検討していく」としている。

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