通導散の効能効果は「比較的体力があり下腹部に圧痛があって便秘しがちなものの次の諸症状:月経不順、月経痛、更年期障害、腰痛、便秘、打身(打撲)、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩凝り)」です。
通導散は淤血を改善する当帰、紅花、蘇木を主薬に、便秘を改善する大黄、枳実、厚朴、芒硝、胃腸を整える陳皮、甘草を配合しています。
配合はシンプルですが、効能効果は多彩です。これは、一貫堂医学の淤血証体質の適応が幅広いことと関係しています。一貫堂医学では淤血証体質は、淤血を腹腔内に多量に保有する者の総称で、赤ら顔で爪の色が暗赤色であり、肥満している婦人に多いとしています。頭痛、頭重、眩暈、上逆、耳鳴、肩凝り、動悸、便秘などの多彩な症状が見られ、通導散で治療するということになっています。
一貫堂医学では淤血証体質を三大体質の一つと認識して大変重要視していました。病名としても脳溢血、片麻痺、喘息、胃腸病(胃酸過多、胃潰瘍、胃癌)、肝臓病、肺結核、痔疾、淋疾、神経性疾患(神経衰弱、ヒステリー)、動脈硬化、常習性便秘、歯痛、眼病、腰痛、脚気、泌尿生殖器疾患、バセドウ病、虫垂炎、発狂、心臓病、婦人科疾患全般(特に子宮や卵巣の炎症及び腫瘍)があげられておます。
このように淤血証に対して優れた観点を持っていましたが、後世方には優れた駆淤血薬がなかったため、当時それほど知られていなかった万病回春・折傷門にある通導散を淤血証体質の主方として繁用しました。一貫堂医学の淤血証体質の認識は、大正から昭和の時代としては非常に秀逸だと思います。
現在でも便秘気味で腹腔内に淤血がある実証の人にとても良い効果があります。上記の淤血証体質に記載されている病名のほかにもメタボリックシンドロームや一部の皮膚病(尋常性乾癬、ニキビ、アトピーなど)に非常によい効果があります。
一貫堂医学では、臓毒証体質と淤血証体質を持つ人は、防風通聖散 と通導散を併用し、解毒証体質と淤血証体質を持つ人は、竜胆瀉肝湯 と通導散を併用し、臓毒証体質と解毒証体質と淤血証体質を持つ人は、防風通聖散と竜胆瀉肝湯と通導散を併用することになっています。ただし、併用する際はそれぞれの使用量を1/2~1/3に減量して、全量が多くならないように注意することになっています。
さて、通導散は大黄や芒硝が含まれていますので、下痢症の人や胃腸虚弱の人には禁忌です。また、妊婦も禁忌になります。
通導散は「腹腔内の淤血を大便から排泄して、血液の汚れを掃除する」漢方薬です。
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