顔面神経麻痺はベル麻痺とも言われ、茎乳突起内の急性非化膿性炎症により起きた末梢性の神経麻痺である。ほとんどが片側のみで顔面部の表情筋が突然麻痺して、額の皺が消え眼裂が広がり、鼻唇溝がなくなって口角が垂れ下がり、顔が健側に向かって引っ張られる。耳のヘルペスが原因になることもある。自然治癒することもあるが、中にはそのまま麻痺が残ってしまうこともあり、手当が遅れてしまうと取り返しがつかないこともある。

現代医学では特効薬はなく、物理療法や鍼灸治療が中心となる疾患である。

現代の鍼灸治療は1920年代には同じような治療法があるが、多くの症例が発表されはじめたのは50年代になってからである。

初期には伝統的な鍼灸治療のみだったが、ここ20年ほどは効果を出すために穴位注射、絡刺、耳針、皮内針、マイクロ波などあたらしい治療がでてきている。

効果を高めるために複数の治療法を組み合わせて総合して治療するようになっている。刺針と抜缶を組み合わせたり、刺針と赤外線治療や、刺針と按摩、マッサージを組み合わせたりしている。

現在はもっとも組み合わせで効果的だったのを併せて治療している。

もっとも効果の高いのは顔面部の刺針で上海中医薬大学でも、顔面刺針を行なって治療しており、かなりの効果をあげている。

報告された4395例の患者の治療を分析すると、患部の穴位を透刺した群と直刺した群を比較すると透刺した群のほうが30%くらい高かった。また、遠位穴を併用し一般に顔面部は片側のみを使い、沿皮刺を使った透刺を主にして使用すると良い効果が得られる

初期で炎症がまだあれば刺す深さは浅くし、充血などがあれば点刺する

本病に対する鍼灸治療の効果は95%くらいである。しかし患者によってかなりの差がある。電気的興奮性テストをすると、変性反応のないものは部分的に変性反応のあるものや変性反応の完全なものに比べて効果が優れていた。難治の陳旧性顔面神経麻痺を治すために近年でも多くの効果的治療がされている。

鍼灸は本病だけじゃなく、外傷性顔面神経麻痺やラムゼイハント症候群からくる末梢性顔面神経麻痺にも効果がある。

鍼灸を使うことで治癒率を飛躍的に上げ、短期間に後遺症を防ぐことができ、上海中医薬大では顔面神経麻痺の主要な治療として鍼灸を上げている。

鍼灸の顔面神経麻痺に対する治療効果は、筋電図により証明することが出来、鍼は筋電図を改善しそれにともなって症状も改善する。

神経支配の失われた筋肉繊維に、新たな神経支配をもたらし、それによって徐々に回復することが実証されている。

治療———-

取穴————
主穴:地倉 水溝 四白 太陽 し竹空 えい風 晴明
配穴:合谷 内庭

治療方法————–
一回の治療で主穴より4穴-5穴選び、配穴より一穴とる。
顔面部の経穴は透穴の手法をとる
。針が目的に到達した後、さらに0、3寸くらい刺入する。
すばやく切皮しゆっくりと刺入する。
念転などはせずに皮膚と針体が10度-15度くらいになるように刺入。
左手の親指を皮膚面において針先や針体の位置や深さなどを確認できるようにする。
針体が筋肉繊維中にあればよく深すぎてはいけない。
小刻みに振動させて、得気後に20分程度置針する。
毎日か、隔日に治療し10回を1クールとしてクール間は5日あける。

治療効果————-
治癒 患部が完全に正常に回復する。著効 ほぼ回復するも笑うと口元がやや歪む、
やや眼がしっかりと閉じていない。
有効 患部は明らかに回復したが、眼を閉じるときにきちんと閉じなく、口も歪む。無効 治療効果がみられず好転しない
938例の症例のうち、治癒767例(81、7%) 著効107例(11、4%) 有効52例(5、5%) 無効12例(1、4%)で、有効率は98、6%だった。

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