昼休みに母のところに面会にいくと、ちょっと不機嫌な顔をしています。

 

 

そう思ってるとやはりいつも聞かないことを聞いてきます。

 

私の今の住所ってどこにあるの?

 

ん?住所は僕の家の住所にはあるよ。でも今はここの施設にいるじゃない?

 

いやいや、ここを退院したらの話だよ、もうすぐ退院だから。

 

 

やはり母はここを退院して出るつもりでいるんだと確信するような話です。母の頭の中ではここは医療施設でそこをよくなったらまた元の生活に戻れると考えているのでしょう。

 

あんたは前の新琴似の家を売ったんだよね?断りもなしに。

 

 

いや、確かに売ったよ。それはお母さんもそうしようということで一緒に売買したんだよ。もちろん僕も一緒だった。だから売却に印鑑も一緒に押したんだよ。

 

そんな覚えはないよ、押してない。あんたが勝手に押したんじゃないの?

 

いやいや。そんなことするわけないでしょ。

それで、その後に円山に越してきて去年まで円山に住んでいたんだよ。

 

そこはどうしたの?また売ったの?

 

いや、売るもなにも、そこは借りて住んでいたんだよ。僕の治療院の二階だったでしょ。

 

そこの売買は?どうしたの?

 

ずっと押し問答状態です。これは帰るに帰れない。このまま納得させずに帰るときっと母は理解しないままイライラがマックスになってしまうでしょう。

かといって、正論がもはや通じない。

 

実家は4年前に売却し、その売却で出たお金は母が半分、残りは僕と弟ともらっています。

現状は母の住所は僕の自宅にあります。

それは、役所からのお手紙だったり、いろいろお知らせが滞りなくきてもらって手続きを僕がとれるようにしてるためという理由もあります。

 

しかし、母の中ではそんなことを言ってもダメでしょう。

今は退院したらどこにいくか、どうしたらいいのかに集約してしまっています。

 

 

退院したら、新しい住まいを探すから。それまで僕の家にいようよ。

 

いやだ。あんたの家になんかは住みたくない。私は一人で住むから。

 

現実を把握できてないというのがわかる。車椅子でトイレも一人ではいけずお風呂にもはいれない。

食事も作ることもできず、もちろん皿も洗えない。

 

わかったよ。じゃ良いところを探してみるね。待ってて。

 

うん。わかったよ。あんたが責任をもっていいマンションを探しな。

 

これでやっと笑顔がでました。