今日の母は13時過ぎにはみんなお部屋に戻り、昼食後のお昼寝をしているところでした。僕がいくと、あんたこんな時間になんだい?働いていないといけない時間でしょと。

うん。今は昼休みだよ。すぐ近くだからね。

そうなんだ、近くで働いているんだね。

うん。近くで働いているよ。

仕事はうまく行ってるの?

うん、特に問題なくうまくいってると思うよ。心配かい?

いや、あんたは心配いらないと思ってたから。

そう?なぜ?

適応能力っていうのかい?そういう能力があんたは昔からあったから。誰にでも合わせていける、空気を読むっていうのかな。

あ~。そういう意味か。

私はそういう人だったと自分で思ってる。今じゃ年取ったけどさ。お父さんは自分が中心じゃないと気が済まない人だった。

うんうん。そうだね。

あんたは、自ら中心を外れる。誰かを中心にして脇にいくだろ?

うん。そうかも・・よくわかるね。

わかるよ、子供の頃から見ていたから。子供の頃は利口だなと思ったものだけど、大人になってからは物足りないなと思っていた。

そうなんだ。物足りないか・・その意見は初めて聞いたよ。

もっとぐいぐい行ってもいいだろうにと何度か思ったよ。

うん、そうなんだね。

ところがさ、あんたは実はぐいぐい行く人だった

ほう。どうして?

自分で勤務してた病院を辞めてさ、中国に渡ったりさ。しかも、まだ年齢もまだまだなのに開業しようとしてとうとう開業したからね。

黙ってみていたけど、度胸はすごいなと思ったものだよ。

度胸っていうかさ、あの頃は若さゆえの勢いだったよ。

それでもさ、そうできない人もいればできる人もいる。できる人はそれで失敗する人も多いはず。

うん、そうだと思う。

母は時折遠くを見るような眼をして僕に話しかけます。認知症ゆえに、ところどころ事実との誤認識もありましたが、おおむねは合っているでしょう。

施設では誰とも会話しない母ですが、こうして僕が行くと会話してくれるのがまだ救いです。
そのうちこの会話もできなくなる日が来ることでしょう。

それまでは続けたいのです。毎日の15分程度の会話ですが・・・

そろそろ時間じゃないの?仕事でしょ?

うん。そろそろいくね。

またね。